enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

曼荼羅と赤い月

 1月31日は、文字通りの”眼福”の日だった(”眼福”:生まれて初めて使う言葉。使いながらも、何となく借り物感・抵抗感のある言葉。でもほかに言葉が見つからない…)。
 それは、鶴見の講座で『東寺密教曼荼羅』のDVDを見せていただいたこと、そして帰宅後に皆既月食を見たこと。
 
 講座の限られた時間内で映し出されたのは、胎蔵曼荼羅(西院本曼荼羅)の一部ではあったけれど、眼の前のモニター画面に吸い込まれてしまうような感覚だった。そして、中台八葉院から観音院、金剛手院の細部の映像を食い入るように見たあとには、首筋が凝り固まってしまっていた。

 展覧会では許されない、不可能な近さで見つめた曼荼羅の描写の繊細さ・緻密さ、生命感・躍動感、華麗さ、そして描き手の祈りと幸福感のようなもの…それらを観て感じ取ったものを何と言い表せばよいだろうか。
(仏さまたちの顔の輪郭線はみな真ん丸…なかでも中台八葉院の南西に首をかしげて座す文殊菩薩さま…その微笑みの意味するものが分からずに動揺した。なぜ首をかしげ、なぜこのような微笑を浮かべているのだろう…)

 また、夜になってベランダから見上げた中空の赤い月。別世界の月の色だった。遠くて美しくて、しかも、これまで見たことの無い月が浮かんでいた。
 この世にいながら、心だけ別世界に誘い出される経験をした幸せな一日だった。