enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

”民主主義にとって極めて危険”なのは?

 何年ぶりだろう…映画館で観たい映画があった。
 『ペンタゴン・ペーパーズ』。
 タイムリーなテーマというだけでなく、楽しませ、考えさせ、励ましてくれる映画だった。
 
 慌しく追いかける字幕の中には印象的な文言も多くあった。
 その一つ…「報道が仕えるべきは国民である。統治者ではない。」
 (アメリカ合衆国憲法修正第1条のなかで”報道の自由”が謳われていることも今回初めて知った。)
 
 1970年代のワシントン・ポスト紙の印刷現場への興味もかき立てられた。
 アメリカの活版印刷…アルファベットの活字が職人さんの手で組まれる場面。
 大時代で垢抜けない輪転機の動き。
 印刷された新聞を流し運ぶ柱状の機械…初めて見る機械?で仕組みが全く分からない…が昇り竜のように何本も天井に向かって這い登ってゆく光景。まるで”油屋”のようなカオスの空間に入り込んでしまう(印刷現場でうごめく人々が異世界で働く”釜爺”たちのようにも見えた)。

 観終わって日本の現実に引き戻される。
 夜になってTVの報道番組が伝える現実は、ハリウッド映画のようなカタルシスをもたらさない。
 重く、深刻な霧がたちこめたままだ。
 
 仕えるべきは国民であり、統治者ではない。
 民主主義にとって極めて危険なのは、事実を伝えようとしない、事実が伝えられていない、ということなのだと思った。