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私の第三十四夜をつづります。

2018.9.4 ~晩夏の七日間~ (2)ニホンカモシカを撮る

 8月28日の夕方、宿を出て、近くの犬川沿いの道を散歩した。
 道際の草むらに見え隠れする小さな蝶の姿を追いかけていると、川向こう…天狗岳の谷を東流する犬川は、その場所で山を大きく回りこんで屈折したのち、大糸線を越えて姫川に流れ入る…の深い緑の中からバリバリと大きな音がした。
 あのような山の急斜面の木々の陰で誰か作業を?とカメラを向けると、そこには黒い大きな岩のようなものが見えた。その岩のように見えたものこそ、初めて見るニホンカモシカの背中だった。

 カモシカと私たちの距離は、川を隔てて20mほどの近さ。
 角を生やし、肉づきの良いカモシカが草を美味しそうにほおばる姿を、息を潜めて見つめ続けた。 
 
 その間にも、私たちが立つ道を大きなトラックが轟音を立てて何台も通り過ぎる。
 それでも、カモシカは耳を澄ませるように動きを止めながらも、それらの車を眼で追いかけることはしなかった。カメラを向ける私たちにも気づいているのか、知らぬふりをしているのか、まったく警戒するそぶりは見せなかった。終始、ごく悠然とした振る舞いだった。

 ムシャムシャと崖際の草(葛?)の葉を食み終えると、カモシカは再び、ゆっくりと山の奥の小暗がりへと消えていった。その後ろ姿を名残り惜しくカメラで追いかけながら、私たちは思いもかけなかった出会いに、思わず、ふーっと息をついた。
(後日、「白馬五竜高山植物園」のパンフレットを見ると、「運が良ければゴンドラから(カモシカを)見つけられるかも」と、やや白っぽいニホンカモシカの写真が載っていた。五竜岳~小遠見岳~天狗岳の山ではニホンカモシカが多く棲息しているのだろうと思った。食害防止のために駆除が行われることも知ったけれど、どうか、元気に暮らし続けていってほしい。)

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山から川べりに出たところで、枝を折るような大きな音を立て、私たちに姿をキャッチされてしまいます。

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ニホンカモシカ②:まず、この葉っぱから?

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先ほどの葉っぱはさほど気に入らなかったのか、川のほうへと近づいてきます。

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しばらく草むらのなかをあちらこちら探し歩いています。

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ニホンカモシカ⑤:手前の川は犬川。私たちに全身をさらしても構わない様子です。

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ニホンカモシカ⑥:トラックが近づいてくる大きな音が気になりましたか?

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ニホンカモシカ⑦:ようやく美味しそうな(?)葉を見つけたようです。

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ニホンカモシカ⑧:また何か気になる音がします。

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ニホンカモシカ⑨:さて、ムシャムシャ、ムシャムシャ。

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ムシャムシャが続きます。濡れた大きな鼻。角の間からは短い前髪? 牛のような、馬のような穏やかな表情。このあと、上品な食事をすませると、のっそりと山に帰ってゆきました。