enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

八重山のチョウ③小浜島・竹富島

 「春  てふてふが一匹 韃靼海峡を渡つて行つた。」
 
 安西冬衛の一行詩…子どもの頃、国語の教科書で”習った”。
 何を”習った”のかは忘れてしまったけれど、「てふてふ」と「韃靼海峡」の文字の形とその音感、広い海の上をひらひらと飛んでゆく蝶のイメージは、強く刻まれた。
(1行でも詩になる不思議も味わったと思う。)
 
 今、この詩を初めて読んだならば、北上する”アサギマダラ”の姿を思い描いてしまうのだろう。
 また、陸を離れ、海原を渡ってゆく”てふてふ”の姿に、”死と隣り合わせの自由”を重ねてしまうのかもしれない。
(若い頃に観た『パピヨン』の最後の場面…青く広大な海原を思い出す。今の私なら、あの映画をずっとましな眼で観ることができるかもしれない。そして、”私にとってのマックィーン像”が打ち砕かれた衝撃から回復できるのかもしれない。)

 今回、八重山で眼にした蝶たちはみな、てふてふと舞いながら、生き急ぐふうだった。
 翅の一部を欠いた蝶も多かった。
 今、八重山の蝶の通り道がまぶしく眼に浮かぶ。

イメージ 1
アサギマダラ(小浜島

イメージ 2
イシガケチョウ(小浜島

イメージ 4
シロオビアゲハ(小浜島

イメージ 3
シロオビアゲハ(竹富島

イメージ 5
八重山舞姫”の展示コーナー(名和昆虫博物館はいむるぶし分室 小浜島):
「はいむるぶし」は”南十字星”を意味する言葉。私のような門外漢でも分かりやすいように工夫された展示…ピンで留められた”舞姫”たちには気の毒だけれど。