私は湿原の風景が好きだ。
なぜだろう?
湿原という…ある意味で…閉じられた空間の中でこそ、解放され、その風景のなかに消えてゆけるように感じるのは?
湿原を歩んでゆくうちに、しだいに日常の時間が遠のいて、記憶の底に沈んでいた世界…私より先に、あらかじめ記憶されていた世界…にさまよいこめるのだ。
今回の池の平湿原では、記憶の底にもぐりこむような不思議な感触は味わえなかったけれど、火口原にスコールが襲来するまで、しばし湿原の光と風を楽しみ、灼熱の残暑を忘れることができた。
乾燥化する湿原
ヤマオダマキ ウスユキソウ(ミネウスユキソウ?)
ヒメキマダラヒカゲ マツムシソウと蛾(シロシタオビエダシャク?)
蝶に混じって蜜を吸う蛾も良く見かけた。
蝶と蛾…私には見分けがつかないけれど、エダシャクのドレスはシックな印象なので、それとなく『蛾?』と分かる気がする。
蝶も蛾も、幼虫時代は私の苦手な”昆虫”そのもの。でも、翅を獲得すると別の存在になってしまう。そして、その素晴らしい翅の命は短いのだ。
気配…湿原に雷が近づいてくる
飛び立つ綿毛 コヒョウモン?
アサギマダラとヒメキマダラヒカゲ:アサギマダラは今夏、その姿が少ないそうだ。確かに、今回見かけたのは2回のみだった。
旅の最後を告げる激しい雨:
他の音をすべてかき消して、気持ち良いほど。
高原の短い旅から帰った今、季節は「処暑」となり、これから「白露」、「秋分」へと進んでゆく。
今朝も、ベランダに出た時、吹く風に、どこか夏の翳りを感じた。
(5月に大切な友人を失ったことが、いまだ受けとめられない。これからの季節がいくつもの喪失とともに巡ってくることを想う。)
「風が吹く そう…私は生きてゆかなければ」