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私の第三十四夜をつづります。

”不動平”への道(1)

 今年の一月末、寒風のなか、下吉沢の不動明王像を初めて拝観した。それから二か月余の間に、季節は初夏へと進んでいる。春の嵐が過ぎた昨日、12世紀の不動明王像がかつて祀られていたという”不動平”を探そうと、
下吉沢を訪ねた。 平塚駅からバスに乗り、中沢橋停留所で降りる。コースとして、上吉沢の妙覚寺を出発し、霧降りの滝を経て”不動平”想定地点に向かい、下吉沢の八釼神社へと下るというプランを立てた。
 人ひとり歩いていない宮下川沿いの道。春を待っていた植物たちのエネルギーが伝わってくる。そしてひんやりとした空気は五月の連休頃のさわやかさだ。
 水量が増している霧降りの滝を過ぎ、送電鉄塔(西相模‐平塚線№76、№75)をたよりに、まず最短コースと思われる№76鉄塔をめざしてみた。ハイキングコースを外れ、悪路をたどる。
 沢沿いに倒木を数十本潜り抜けて30分ほどたったところで道らしきものを見失い、引き返すことになる。№76鉄塔へ分岐する道はもっと霧降りの滝に近いところにあったのかもしれない。
 再び、鷹取山へ向かう穏やかなハイキングコースに戻り、№75鉄塔への分岐点をめざす。小一時間ほど無駄骨を折った迷い人を、タチツボスミレやガビチョウの鮮やかな囀りがなぐさめてくれる。
 次の分岐点は霧降りの滝と日之宮神社との中間地点にあった。小さな流れを渡り、手入れされた坂道を登る。№75鉄塔を無事に過ぎて登り続けると、あたかも、かつて不動堂があった場所(註1)へと導くような石段へとたどりついた。
 
 【註1】 『平塚市地名誌事典』(小川治良 2000)によれば、かつて”不動堂”があったとされる小字名「日影沢」の平坦地は、今回の”不動平”推定地の南およそ400mの地点で、「現在の状況は、全域山林地帯」となっている。
 
イメージ 1
霧降りの滝
 
イメージ 2
傍で小さく流れる滝
 
イメージ 3
”不動平”想定地の石段