昨日は一歩も外に出なかった。もうすぐ五月が終わろうというのに。
葛根湯を飲み咽喉の痛みが和らいだ。外の空気を吸いにゆこう。
どんよりと重い頭も身体も、一歩外に出ただけで生き返るようだ。
血液の中に酸素がとけてゆく。
海は今日も風が強い。砂がそこかしこに押し寄せている。
しばらく見ないうちに、浜辺暮らしの猫を覆い隠すように草の丈が伸びていた。
猫のベンチにそっと近づくと、海に背中を向けて丸まっている。
『元気? 今日も風が強いね。』
カメラを向けると厭そうにそっぽを向いた。