enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2013.6.30

 司祭者は語る。
 その白くやわらかな手から「今、矢が放たれた」と。
 祝祭に捧げる魔物に向かって「次々と矢は放たれた」と。
 人々は手を休めずに耳を傾けている。
 その労働の果てに祝祭は用意されるべきだったから。
 しかし、人々は気づき始める。
 その司祭者の言葉が予祝儀礼であったことを。
 人々がその祝祭の宴に加わる予定もないだろうことを。
 そして手を休めずに考え始める。 
 祝祭を自分の手に取り戻さなくてはならないと。
 この海に、この山に、この野に、祝祭を取り戻すことができるのだと。