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私の第三十四夜をつづります。

相模集-由無言6 賀茂保憲女の「心の鬼」

 「 憂き世には 花ともがなや  とどまらで 我が身を風に まかせ果つべき 」
 
 「 年ごとに 人はやらへど 目に見えぬ 心の鬼は 行く方もなし 」
 
 相模という人を知った縁で、今日、賀茂保憲女という人の存在も知ることとなった。
 賀茂保憲は慶滋保章とは兄弟…つまり、相模の母(慶滋保章女)とは従姉妹にあたる人のようだ。
 初めてその歌のいくつかを目にして、とても不思議な気持ちになった。何か特別な存在感が感じられた。ただならぬ気配とでもいえばよいのだろうか。
 まず、 「心の鬼」などという言葉がシニカルな目線で和歌に詠まれていることにギョッとさせられる。現代でこそ、「心の闇」というフレーズが普通に使われているが、平安時代ですでに、「心の鬼」について歌に詠まずにはいられなかったのか、と驚くのだ。
 相模集を読みこなせていない段階で、賀茂保憲女の歌の世界にまで分け入ることはできないけれど、今、私の中は『いったい、(10~)11世紀の平安京に生きた女性達とは、どのような人達だったのだろう…』という驚き、好奇心でいっぱいだ。