enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2013.12.11~13 (1)

 11日の朝、窓の外でキーッと鋭い声がした。カメラを持ってそっと窓を開け、レンズをそろりそろりと向ける。残った最後の柿の実をついばむヒヨドリだ。私が撮影できる野鳥は数少ない・・・。ささやかな喜び。
 午後になって、この秋初めての遠出をする。このくらいの呼吸なら富戸の坂を登れるだろうか。苦しくなったら休めばいいか・・・。ちょっとだけの不安。
 伊豆に向かう電車の中ではいつも、歌人相模が辿った走湯権現までの道のりについて想わずにいられない。熱海まで、窓から目に飛び込んでくるのは切り立った海岸線だったり、いくつもいくつも繰り返し迫るトンネルだったりする。平安時代の道のりは、この鉄路のルートそのものではないとしても、大きく外れてはいないのではないか。歌人相模の参詣ルートは箱根経由ではなく、相模湾岸の山中の道を辿ったのだろうという思いはずっと変わっていない。
 それにしても、馬に乗ってなのか徒歩なのか、何日かかったのか、宿はどのあたりか、一行は何人程度だったのだろうか。ずっとルート探索計画を実行しないままの自分。何一つ地道な作業ができていない・・・。大きな焦燥感。
 富戸駅には、まだ陽のあるうちに着けばいいと思っていた。確かに陽はたっぷりあったけれど、坂道をわらわらと舞い下りてくる枯葉の出迎えに『しまった…』と思った。マスクを忘れた。冷たく激しい向かい風と急坂に負けないよう、自分を励ましながら登る。遠出の一日目を何とかこなした。
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12月のヒヨドリの朝食
 
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12月の午後の利島