9月に入ってから、平塚の図書館で、その大きなポスターを眼にしていた。階段の踊り場で何度も立ち止まり、ポスター全面を占める仏像(?)の面を眺め、その美しさと厳しさに惹きつけられた。
国宝館の展示解説を読み、その面が”菩薩面”であること、東大寺大仏供養に際し、頼朝が手向山八幡宮から贈られたものとして鶴岡八幡宮に伝わっていることを知った。(頼朝が東大寺の再建に貢献していたことすら知らなかった…。)
眼の前の木造菩薩面は、ポスターでの印象より、ずっとこじんまりと優美な表情に見えた。しかも、能面のように平たい面ではなく、ちょうど仏像頭部から前面を矧いで置いたように立体的な作りだった。(顔の小さな人なら覆うことができるのだろうか。呼吸することは難しそうだ。どのように使われる面なのだろう…。)
暗く肌寒いほどの国宝館を出ると、秋の陽射しがまぶしく感じられた。予定では美術館に寄るはずだったけれど、頭痛の気配がしてとりやめ、外を歩こうと思った。そのまま小町通に戻り、扇ヶ谷に向かった。
扇ヶ谷から亀ヶ谷坂を越えて北鎌倉駅に向かう道には、鎌倉十井の多くが点在していた。湧水の道でもあるようだ。観光の賑わいから少しだけ離れた静かな道のところどころに、惜しげなく萩が咲いていた。これから向かう海蔵寺に咲く萩の花へと導かれるようでもあった。
国宝館の”月と星”
黄葉のカツラ(扇ヶ谷)
海蔵寺山門の萩
境内の桔梗
境内の石楠花にとまるイチモンジセセリ?
境内の岩窟の草紅葉…暗い岩盤の天井から、色とりどりの星が降りそそぐようだった。