enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2017.2.15

 まだ中学生の頃の私は、毎日、新聞小説を読んでいたのだと思う。
 『氷点』、『化石』、『奇病連盟』…何でも忘れるようになった今でも、そのタイトルを覚えているくらいなのだから。
 それらの新聞小説の記憶といえば、挿絵よりもずっと美しいはずの少女のイメージだったり、老人の醒めた独白の知的な雰囲気だったり、奇妙な歩き方の描き方だったり…わずかにほんのひとかけらずつ。 
 そして、最近になって、『化石』の主人公のことを何度となく思い出すことがあった。私の身体の内側の粘膜に”蟹”が食いついている…そんなイメージがぴったりの感覚があったのだ(確か、『化石』の主人公の老人は、自分の身体に”蟹”が棲みついているように感じていたのだったと思う)。 
 自分も『化石』の老人と同じような年齢と身体をもつほどに成長(?)したのだな、と不思議な感慨があった。

 この数日、私の身体の中の”蟹”のイメージが少しずつ遠のくようになった。再び、海まで足を延ばす力が戻ってきた。まだ、日没までには時間があった。海に出かけよう…。

 2月半ばの夕方の海は、長くさまよえば手指が鈍くかじかんでゆく。冬から春へと移ってゆく今…その過程のかじかみだ。

2月15日の大島
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2月15日の海
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2月15日の富士
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2月15日の日没
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海上のヘリ:ヘリだけではなく、海のかなたから戦闘機が続々と厚木へと戻ってゆく。最近では、ヘリの音を聞くと、オスプレイの飛ぶ空がだぶるような気がする。
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