安曇野で雪かきをする友人のことを思い、家にこもりがちな自分を少し情けなく感じた。
24日、そんな気持ちを見透かされたように、海に一緒に?と誘われた。
まぶしいほどに明るい陽射しにもうながされ、海へと向かった。
海岸道路で歩道橋を渡る頃に、呼吸の不安がよぎった。昨晩の薬の効き目が薄れているのだろうと思った。
砂浜に出ると、いきなり、体が揺れるほどの西風に鼻も口もふさがれる。頬を砂粒が打った。
それでも、荒れる西風のなかに身を置くと、かえって気持ちが晴れてゆくようだった。
西風に背を向けながら波打ち際に下りてゆく。海は翡翠色に波打っていた。
波乗り板を抱えた若者が押し寄せるうねりを眺めている。こんな日に…こんな日だから?
強烈な西風がベージュ色の砂煙となって、引き波の横を直線的に駆け抜けてゆく。
しばらくして波間に入ってゆく若者。彼には、私が決して知ることの無い波との対話があるのだろうなと思った。私にできるのは波に運ばれた小さな巻貝を拾うことくらいだけれど。
風に煽られながら浜をのぼる。
強い風が、なぜか呼吸の不安を吹き飛ばすという不思議。
狭くなった気管支には、ルーティンなリズムとは別の新しい呼吸が必要なのかもしれない。
いっそう強まるばかりの風をいったん避けようと、防砂林のなかへ入り込んだ。
背の高い松はその頭を強風に揺らしながらも、私たちや鳥たちにとって、温室のような別世界をつくってくれていた。
木漏れ陽と鳥たちの囀りが、鬱蒼として奥深い防砂林に抱いていた警戒心を追い払ってくれる。
松林を抜けて広い公園に出る。遠く、雪をわずかに載せた丹沢や大山の稜線が望めた。
箱根の上の雲
光る海①
光る海②
走り抜けるベージュ色の砂煙
松林の中に開いた小さな空
丹沢~大山(海岸公園から)