著者の語り口は正直で親しみやすいものだ。著者が扱おうとした”主題”を鮮やかに理解できる。それは、生身の頭脳で直感・実感された”主題”だということが、読む人に伝わるように書かれているから。
ただ、収録されている文章の短さが制約するように、重い”主題”を掘り下げることは意図されていない。当然のことながら、そのまま私の納得や共感につながるわけではない。それでも、私のなかのモヤモヤの一部分が言語化されたような安心感があった。
そして、「日本的情況を見くびらない」、「日本的情況にふたたび足をすくわれること」を恐れる、という著者の不断の”身構え”に共感した。