enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

西瓜を買う。

「お願いしま~す!」
「は~い!」
「西瓜ください」
「は~い」
「どれにしましょう?」

「じゃ、これを?」
「はい!」
「袋はありますから…」
「だいじょうぶですか? 濡れますけど?」
「そのまま入れてください・・・おいくらですか?」
「200円です」

今日、小さな通りのお米屋さんの店先で西瓜を売っていた。
いつも、季節の野菜が少しだけ並んでいる。でも西瓜が並ぶのは珍しかった。
一度通り過ぎてから、『西瓜…』と思って、店先に戻った。
(店には大きな猫と小さな犬がいて、お店番もしている。)

子どもの頃の西瓜は緑と黒のダンダラ模様が良く分かった。
台所で丸ごとの西瓜をぽんぽんと叩いてその音を確かめたりする。
包丁を入れるとポーンとはじけるように割れてしまう。
待っていた”甘く青い水気の放出”…そのみずみずしい香りは西瓜だけのもの。
切っても小さな木の冷蔵庫には入りきらなかったはずの丸ごとの西瓜。
母はどうやって冷やしたのだろう。

私たちは縁側で西瓜をかじり、庭に向かって種を飛ばしたりした。
(兄たちは見えなくなるところまで遠くに飛ばした。私のは眼の前に落ちるだけだった。)
私たちがかじった西瓜はそんなに冷やしてなかったかもしれない。
 
大人になってから自分で買う西瓜はいつも8分の1か6分の1。ダンダラ模様は分からない。
ラップに包まれた三日月形の西瓜を冷蔵庫に押し込む。
子供の頃の西瓜の思い出の名残りは今、使っていた西瓜のスプーンだけ。

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