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私の第三十四夜をつづります。

能登の海と陸②

 初めての能登の地では、黒い瓦屋根と黒い板壁の家が多く目についた。
 私の子どもの頃のトタン屋根の家も、コールタール塗りの板壁だった。しかし、その記憶は、能登の建物のような黒々と繊細な印象とはまったく別のものだ。
 そもそも時代が大きく違うのだけれど…家々の黒い板壁は、その土地の自然や気候との調和を意図しているように感じられた。
 
 駆け足の旅の2日目の朝、輪島の朝市通りを歩いた。
 朝市通りを西に抜けると輪島川(河原田川)に突き当たった。
 輪島川には朱塗りの「いろは橋」が架かり、川は橋のすぐ先で輪島港日本海へと流れ出る。
 その輪島川を数百mさかのぼると「新橋」が架かり、目の前で左右二手(河原田川鳳至川)に分かれる…というより、二つの川が合流した地点に「新橋」が架かっている。
 街が川と海とともにある…そうした意味では平塚の相模川河口部と共通しているのに、その景観に似通ったところがない。少なくとも、現在の景観は似ていない。きっと、川の役割も海の役割も、それぞれ歴史が異なるからなのだろうと思った。

【輪島川河口近くの建物】

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建物①(輪島市):
朝市通りの外れに建つ。二階の縦長の窓が三つ、等間隔で並ぶ。
なぜだろう、建物のなかで”窓”に惹かれることが多い。

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建物②(輪島市 「いろは蔵」):
「いろは橋」の左岸側に建つ。
小屋組みが見て取れる空間にわくわくした。改築の際に二階の半分ほどの床を取り払っているらしく、より広がった空間が見て取れる。室内には、二人の画家の作品が気持ちよく並び、そして温かい。静かなカフェのように居心地の良い空間。

「いろは蔵」の大窓からの眺め:
輪島川沿いの通りに面した大きな窓は、見知らぬヨーロッパの絵画のよう…川は運河にも見える。
奥の橋は「新橋」。その先で、二つの川が合流し、この輪島川(河原田川)となる。
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建物③(輪島市):
「いろは蔵」の大窓から眺めた川辺の大屋根の家。大きな家に見えるのだけれど、川沿いの道路から真正面で見ると、とても幅の狭い(細長い)家なのだった。小さな窓の配置と広い板壁、全体の色調に惹かれた建物。

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輪島川(河原田川 新橋から河口方面を望む):
「いろは蔵」で展示されていた作品のなかに、ここに似た風景を描いたものがあった(作品名は『輪島川』)。
赤い「いろは橋」は流路のカーブの先に隠れて見えない。

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建物④(輪島市):
河口近くの路地。やはり縦長の窓が並んでいる。

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建物⑤(輪島市):
④の建物を、赤い「いろは橋」とともに河口側から撮影。この建物も薄い。平塚港近くに、こうした風景は無い…たぶん。