5月末、家族が参加する東北旅行に誘われ、初夏の緑のなかを歩いて廻った。
若い頃に仕事で訪れた山形県、友人たちと縄文遺跡を巡った青森県、また考古学の仲間や大震災後にボランティアグループとともに向かった宮城県…いずれも短い滞在で、その地域の自然や季節を感じ取る余裕はほとんどなかった。
今回は、新緑の東北に憧れつつ、初めて新幹線「こまち」で秋田に向かうことになった。
記憶が霞の彼方に消えてしまう前に、旅先で出会った草花など、印象に残った風景をまとめておこうと思う。
(自分の記憶機能にまったく自信を失いつつある今、こうして旅の記録写真をまとめておくことは、衰えた脳力を補完するバックアップ作業の意味合いを持つようになってきている。)
旅先で最初に出かけたのは、岩手県の鞍掛山だった。
”イーハトーブの風景地”にも指定されている山…なんだか嬉しくなる。
ツツドリの静かな声も聴こえてくる山道だった。
見知らぬ山道というのは、とりわけ、すべてが新鮮で、眼も耳もキョロキョロするばかりなのだった。
ヤマキマダラヒカゲ
小さな流れを渡る:
周囲のすべてがキラキラしていて、お伽話の世界に入り込んだような気持ちになる。
ミヤマスミレ:
スミレは数多く見かけたけれど、咲き終わりつつあるものが多かった。
頂上から岩手山を望む:
登り口の標高が530m…400mも登っていないのだった。それなのに、この眺望が待っていた。
山に咲くツツジは花も小さく数も少なく、涼しげだ。
タンポポの綿毛:
鞍掛山を降り、小岩井農場に向かう途中、小さな白い花火が足もとで光っていた。
「鞍掛山は岩手富士として名高い岩手山の南麓に位置し、馬の背に鞍を伏せるが如く緩やかな盛り上がりを見せる標高897mの山である。賢治は、その立地と形状から、岩手山に先行して形成された成層火山の山体の一部が残存したものと指摘した。彼は鞍掛山とその麓の「をきな草」が咲く草地を愛したとされ、「白い鳥」など複数の散文詩に「くらかけ山」の風景を詠んだ。」