enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

終わっちゃいなかった。

 

 

喜びの感情は短い。あっという間に消えてゆく。
喜びの感情や幸福感より、悲しさ、口惜しさ、怒りの感情のほうがずっと長続きする。
なぜだろう? 生き残るため、生き延びるためには、そちらのほうが都合がよいのだろうか?

 

つかの間の喜び。

例えば…古い映画『鉄道員』をなつかしく観て…。
そのラスト近く、鉄道員の妻が斜め右上を見上げ、魂を遠く飛び立たせたような表情を浮かべるシーンがある。
映画のなかでその構図は二度繰り返される。
二度目となるラスト近くのシーンでは、その眼は、その表情は、すでに宗教的な光をまとったように見える。
(それと同じ眼をグレコの絵の中で観たことがあるように思った。調べてみると、それは『改悛するマグダラのマリア』(ウースター美術館 アメリカ)に描かれた眼・表情だった。私にとって、こんな小さな発見がつかの間の喜びだったりする。)

 

つかの間の喜び。

例えば…残暑の中で、いっとき涼しい風を感じる時…。
例えば…残暑の中で、高い空、風に梳き流されてゆく雲を見上げた時…。
(いつも、季節が進むなかに、つかの間の喜びがある。)

 

つかの間の喜び。

例えば…現政権の終焉を告げる報道に接して…。
(しかし、その喜びの余韻に浸る間もなく、現政権を継承・維持する政権が誕生するのだと知らされた。)

 

逆戻りだ…何もまだ終わっちゃいなかった。
喜びは本当に長続きしないものなのだ。

 

【進んでゆく季節】

f:id:vgeruda:20200905122240j:plain9月3日の空と雲

 

f:id:vgeruda:20200905122255j:plain9月3日の波:台風の季節が始まる。

 

f:id:vgeruda:20200905122317j:plain9月3日の風

 

f:id:vgeruda:20200905122336j:plain色づきはじめたドングリ