enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

冬の薔薇もまた、薔薇だ。

冬の薔薇は凛々しく凍えている。

かじかみ、ちぢみ、しおれ、それでも咲く。

わずかに潤う土。淡い陽光。

土から、空から、吸い込まれた力が、その花弁の先端のやわらかな色彩へと移り届くのだろうか。

冬の薔薇もまた、薔薇なのだと、凍えながらも、芯のありかから咲いている。

 

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1月20日の薔薇「プリンセス・アイコ」(人魚姫の公園で)

 

【追記】

「プリンセス・アイコ」という薔薇の名前を眼にして、読み始めたばかりの本…院政 天皇上皇の日本史』(本郷恵子 講談社現代新書 2019年)…のことを思い出した。その本の「はじめに」の文章は次のような言葉でしめくくられている。
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天皇の父であることを根拠に権力を掌握した院のもとに、日本のさまざまな場所で胎動していたエネルギーが引き寄せられ、大きなうねりとなった。 

 「中古以来譲位の慣例」から生まれた「院政」という政治方式を追跡することを中心に、「万世一系」とうたわれる血統の再生産がいかにして維持されてきたのか、それを支えてきた組織や財政の仕組み、社会の構造がどのようなものであったかを考えていくのが本書の目的である。

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また、「おわりに」の文章は、次のような”呼びかけ”の言葉で終わっている。

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…「滅びることなく続いてきた天皇制」という答えが与えられている以上、その答えにあわせておけば間違いないとして、天皇を核に据える予定調和的モデルを作って安心してしまってはいなかっただろうか。継続は正しさの証明であるとして、検証を怠っていたところがなかっただろうか。
 天皇制そのものについて考え抜き、進むべき方法を定めることは、何らかの痛みをもたらす営為となるだろう。国民国家概念だけでなく「母国」という枠組みまでを更新する、あるいは崩すことにつながるかもしれない。私たちは、千数百年のあいだ懸案となっていた課題に挑むことを求められているのだ。
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また著者は、「皇族数の減少という問題」についても、
もちろん、そもそも人智を超えた問題だから、特段の方策は講じず、なりゆきにまかせるという判断もあるだろう。ただし無策という策を選択する判断は、明確な形で下すべきである。」としている。

この本を最後まで読み通した時、私がぼんやり思い描いてきた「無策」の怯懦から一歩抜け出せるような視点が得られるだろうか。生身の女性皇族の名を付された薔薇を、ただ愛でているだけの私にも。