enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

メモ:相模国府域内:飛雲文軒平瓦・単弁六葉蓮華文軒丸瓦 出土地点

2月26日の現地見学会、その後、4月の速報展で眼にした”六ノ域遺跡第20地点出土の珠文縁飛雲文軒平瓦”について調べるなかで、相模国府域内の「飛雲文軒平瓦」と「単弁六葉蓮華文軒丸瓦」の出土について、メモをまとめた。

~疑問点~
両者はなぜ国府中枢域で出土するのか? 
(その出土点数が少ないのはなぜか?)
両者が大会原遺跡や高林寺遺跡、六ノ域遺跡などで近接して出土することは偶然なのか?
横須賀市:宗元寺では「飛雲文軒平瓦」と「単弁八葉蓮華文軒丸瓦」、小田原市:千代寺院跡〔千代廃寺〕では「飛雲文軒平瓦」と「葡萄唐草文軒平瓦」が組み合うことから、国府域では「飛雲文軒平瓦」と「単弁六葉蓮華文軒丸瓦」が組み合う?と推定することは可能なのか?)
神奈川県内の他地域から出土した資料との同笵関係は何を意味するのか?
高林寺遺跡第5地点の「飛雲文軒平瓦」・「単弁六葉蓮華文軒丸瓦」が宗元寺・千代寺院跡〔千代廃寺〕と同笵であり、大会原遺跡第4地点の「単弁六葉蓮華文軒丸瓦 」が、海老名市:相模国分二寺や茅ケ崎市:下寺尾寺院跡〔下寺尾廃寺〕と同笵であることは何を意味するのか?)

_______________________________________

相模国府域内:飛雲文軒平瓦 出土地点】
六ノ域遺跡第20地点 1点
高林寺遺跡第5地点 2点(小片)
高林寺遺跡第8地点 1点(小片)
高林寺遺跡第1地区第2地点(四之宮下郷1区) 1点 
湘南新道関連遺跡:大会原遺跡第4地点 1点
        :六ノ域遺跡第14地点 1点
        :坪ノ内遺跡第7地点 1点

相模国府域内:単弁六葉蓮華文軒丸瓦 出土地点】
高林寺遺跡第5地点 1点 
湘南新道関連遺跡:大会原遺跡第4地点 2点【註】
湘南新道関連遺跡:六ノ域遺跡第14地点 1点(瓦当部・丸瓦部は別地点から出土)

f:id:vgeruda:20220407230328j:plain

【参考資料】
平塚市史別編 考古基礎資料集成1 平塚市内出土の古瓦』(平塚博物館市史編さん担当 2000年)
『湘南新道関連遺跡Ⅱ』・『湘南新道関連遺跡Ⅳ』(財団法人かながわ考古学財団 2009年)
『四之宮下郷』(神田・大野遺跡発掘調査団 1984年)
「平塚の古瓦-高林寺境内出土瓦と前鳥神社蔵瓦-」(岡本孝之・新倉香 平塚市博物館研究報告『自然と文化』№26 2003年)
『かながわの古代寺院』(神奈川県考古学会 2000年)
『瓦が語るかながわの古代寺院』(神奈川県立博物館 2008年)
「六ノ域遺跡第20地点 現地見学会資料」(2022年2月26日)

【註】
大会原遺跡第4地点(湘南新道関連遺跡)出土の軒丸瓦については、『平塚の考古資料50選』(平塚市博物館 2002年)で、その出土状況が詳しく記述されている。

(引用文中の「横須賀市の宗元寺、小田原市の千代廃寺といった古代寺院の遺跡からも同種の文様瓦が報告され…」とあるのは、小田原市指定文化財 千代寺院跡出土瓦一覧』(1-20211021150958.pdf (city.odawara.kanagawa.jp))に載る「六葉単弁蓮華文軒丸瓦  改修期  軒丸瓦 1」と思われるが、大会原遺跡第4地点(湘南新道関連遺跡)出土の資料と同笵かどうかは不明。また、宗元寺出土瓦についても同笵関係は不明。)
_______________________________________
珠文縁六葉単弁蓮華文軒丸瓦
遺跡名 大会原遺跡(平塚市四之宮字大会原)
大きさ 長さ44㎝、瓦当部直径19.3~20.3㎝
年 代 平安時代(9世紀)

 湘南新道関連遺跡・大会原遺跡発掘調査で、平安時代の竪穴住居(H1号住居)のカマドから出土しました。この住居のカマドは灰白色粘土で構築されていますが、側壁の中に丸瓦が4点(そのうち焚き口側の両端部には軒丸瓦)を補強材として使用し、火床面の奥壁寄りには土師器の小型甕を一対伏せ置き、さらに煙道部に土師器甕を転用するという構造でした。
 軒丸瓦のうち1点は完形品(本資料)で、平塚市内の遺跡から出土した軒丸瓦で完全な形のままで発見された事例としては初めてです。瓦当面の文様には珠文縁六葉単弁蓮華文が施され、神奈川県内では他に海老名市の国分二寺、横須賀市の宗元寺、小田原市の千代廃寺といった古代寺院の遺跡からも同種の文様瓦が報告されています。
 また、住居の覆土中から同じ文様の軒瓦(瓦当部分のみ)が、さらに住居の付近からが飛雲文を施した軒平瓦の破片がそれぞれ1点ずつ出土しています。(依田)
_______________________________________

                          『平塚の考古資料50選』(平塚市博物館 2002年)

【追記】
平塚市内での飛雲文軒平瓦・単弁六葉蓮華文以外の文様瓦の出土例・所蔵例は次の通り。
〔均整唐草文 軒平瓦〕
  *六ノ域遺跡第4地点
  *高林寺遺跡第7地点
  *天神前遺跡第7地点
  *山王B遺跡<金子晧彦氏所蔵>
〔八葉変則単弁蓮華文 軒丸瓦〕
 (『四之宮下郷』には記載があるが『平塚市内出土の古瓦』には載っていない。)
〔素弁蓮華文 軒丸瓦〕
  *湘南新道関連遺跡:六ノ域遺跡第14地点 
  *<前鳥神社所蔵>
〔素弁蓮華文 垂木先瓦〕
  *<前鳥神社所蔵>