enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

光と影の季節

ベランダの小さなスミレたちは勢いを失い、緑の葉が生い茂るばかりになった。

初夏の光を避け、家の中でとりとめのない時間を過ごす日々。

午後になり、陽ざしが少しだけやわらいでくる。ふと、『Both Sides Now』の旋律が思い浮かんだ。初めて、白鳥さんが歌う『青春の光と影』を聴いてみた。透きとおった声が胸に響いて心が揺れる。

そのまま、ビージーズの『First of May』も聴いてみた。なつかしい映像が流れてゆく。

70歳ともなると、人生の宝物はすべて過去の中にあるらしい。そこにまぶしい光があっても、眉をひそめるほどまぶしくはない。まぶしい光の裏側にひんやりした影がひそむことを知ったからだろうか。

季節がさわやかに光を増してゆくにつれて、心も身体も追いつかずに変調し低迷する。若い頃からそうだったと思う。

4月から5月へ…言葉にあらわせば”美しい光の季節”に違いなく、同時に、私にとっては一刻も早く抜け出したい季節だ。

 

5月4日の渚

 

道ばたのハマナスとナヨクサフジの花