2012.5.21
5時半には南の空にわずかな水色が見えた。7時前には強い雨音。空は一面鉛色だ。あきらめずに傘をさして海岸へ。
2009年7月、仲間と川辺でカラムシを採っていると、あたりが暗くなった。部分日蝕だと気がついた。あの日から3年近くが過ぎたのだ。
海に着くと、雲の薄いところから白い太陽が顔を覗かせはじめた。携帯を持った見知らぬ人と「見えますね」と声をかわす。7時半から何回か、ためらいつつも肉眼で日蝕を垣間見た。太陽が月のように細くシャープに輝いている。
光が強くなり、鉛色の空が軽くなってゆく。海岸ではたくさんの人たちが、まだ名残惜しそうに空を仰いでいる。 『見えましたね…』