enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

海鳴り

 眼が覚めると不思議なくらい静かだった。数時間前、吼えるような唸るような風の声を聴きながら眠ったばかりなのに。数年前まで住んでいた家は海から700mほどで、台風の季節には枕元に海鳴りの音が届いた。今、台風の波はどれほど砂丘に迫っているのだろうか。海まで歩いてみようと外に出た。台風が通り抜けた朝、空気は潮の匂いとは別の生臭さを残している。
 海岸から400mほどまで近づくと、飛行場か巨大な工場のような音が頭を覆いはじめる。ゴーッと遠く響く海鳴りではない。ドームで蓋をされたような圧迫感・・・耳鳴りのような音だ。
 5時半の平塚海岸。砂が湿って重たい。大きな白波がテトラポッドの養浜堤を越えてくる。朝の光に照らされて、虹ヶ浜の砂崖がクッキリとした線と形を見せている。まさかと思ったが、やはり崖下ギリギリまで波が押し寄せる。人が通る僅かな幅の砂浜も残されていないのだ。
 砂浜がかろうじて守られているのはテトラポッドの内側だけなのか。むしろ、このヘッドランドのために、虹ヶ浜の侵食が大きくなっているのだろうか。足元まで波が寄せて、じきにカメラレンズが曇ってしまった。
 
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                                                        台風に洗われた砂浜