時には空を見上げても心が飛びたっていかないことがある。
そんな時も、海を見れば何とかなる。
海をわたってくる風の音。荒々しく、また静かな波の呼吸。洗われた砂に映る夕焼け。
いつのまにか、私のなかに海がはいりこんで、海にひたされ、海にとけていく。
帰りがけにベンチを見やると、浜辺暮らしの猫のご主人の姿があった。
今日は浜辺暮らしの猫が海に戻ってきているのだ。
思わず、砂を踏みしめる足に力が入る。
遠くから久しぶりに見る君は、なぜか、ベンチの下に隠れてしまった。
もぐりこんだまま出てこないのは、きっと浜の砂の感触をなつかしんでいるんだね。
10月6日の海