enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2014.3.14

 昨日の午後、雨が降るなか、図書館に出かけた。傘を打つ雨の音で、外界から閉ざされたような気持ちになる。子どもの頃に教科書に登場した”コペル君”がビルの上から観たのは、こんなふうな灰色に塗り込められた雨の街だったのだろうか。とりとめのない意識の断片が、頭の中に浮かんでは消えてゆく。
 図書館の学習室で、分厚い貝類図鑑を棚から取り出す。学習室の机は空席が目立った。ポケットに入れてあった巻貝を図鑑の横に置いて、図鑑のきれいなカラー写真と照らし合わせていく。巻き方や色合いの似ているものがいくつもあった。
 しかし、結局、その殻口が欠けている巻貝の名前をたずね当てることはできなかった。それにしても、どうして、これほどの形や色の多様性が生まれるのだろうと思う。学問上の分類名とは離れて、私が拾った”この巻貝”は、この世界でたった一つの存在であり、その存在を指し示すには、”この巻貝そのもの”としか言いようがない…そんなふうに思えてくる。詳しく分類された貝類図鑑を目の前にしながら、身も蓋もない結論になった。
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欠けた巻貝