enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016.1.10

 9日は神保町に向かった。
 かつての職場の先輩がリタイアし、その彼を囲むささやかな宴があった。神保町の一角に古い仲間が次々と集まってくる。懐かしい顔ばかり。40年ぶりに逢えた人もいる。みな、確実に肉体に老いを加えながら、それぞれの個性をそのまま保ち続けている(ように思えた)。表情も話しぶりも、ほとんど変わっていない…不思議だ。みな、その当時の自分をお互いに呼び起こしあってしまうのだろうか。私自身、いつもの私らしい(?)私ではない話し方をしているように感じた。仲間と共に在った20代~30代の私のことを思い出そうとする。私は、あの頃、どんな私だったろう。最も親しい他者を思い出すような、思い出せないような…。
 とにかく、午後の数時間、古い仲間たちは再び同じ時間を共有し、飛び交う声の渦巻きが、店の天井へとたちのぼり続けた。みなが、2016年の今現在から遠く旅立って、別の時空にいたのだと思う。そして、それぞれの現在の自分に戻るかのように、古い仲間たちは神保町の交差点で散り別れていった。
 魔法の時間が解け、2016年1月9日の神保町の街並みが現れる。空を見上げると、まだ水色の空。雲一つなかった。

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9日の記念に持ち帰ったコースター…変貌する神保町の街並みのなかで、今も生き残る店。店内は満席の賑わいだった。東隣のカレー店も健在のようだ。ただ、同じ並びの「柏水堂」の古風で小さな店構えはもうどこにもない。レモンパイもセアルジャンも、人々の記憶のなかで生き残るのみだ。