enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016.2.27

 26日、海に出かけた。二度目の風邪で海が遠のいていた。何事も体調のご機嫌伺いが先になる毎日…軟弱な保身力がすっかり身についた気がする。
 そんな私と対照的に、同世代の仲間たちはタフというしかなかった。若いころから何度も重い手術を乗り越えてきた友人は言う。「肉体の不調に邪魔されるのが嫌…精神が肉体を押さえて微熱ぐらいなら動いてしまう」と。精神が肉体に支配されてしまうのを潔しとしない…日頃の友人の姿を思えば、納得がいく。そうだったのか…と。
 人の姿がまばらな海岸。大島も富士山も隠れていた。波の音が響くだけの砂浜を東に西に歩く。ふんわりと湿った砂の感触が私の重力を吸い取ってくれる。
 寄せ波が越えそうで越えないぎりぎりの砂の稜線が続く。そこに短いメッセージが消えずに残されていた。砂の上のメッセージから、その”希いの姿”が浮かび上がってくるように感じた。海に向かって若い女性がつま先をそろえてしゃがむ後ろ姿。砂に刻まれてゆく線が意味をあらわしてゆく時間。そして手のひらを重ねるように砂に押しあてるところも。
 私は母を想って海に向かったことはあったろうか…そんなことを思った。

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風の跡
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