enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

お彼岸の海辺

 

21日朝、目が覚めた時、のどのあたりで突然ヒューという音がした。『そろそろ喘息かな?』と思った。でも、まだ苦になるほどではない。いつまでも寝ていたい気持ちよさを、エイヤっと振り切って起き上がる。涼しい朝は嬉しい。

午前中に次兄の家に葡萄を届けたあと、いったん家に戻り、午後になって、再び海に向かった。怖がらずにどこまでも歩けるようになった。これも嬉しい。

季節が秋に移った今、心配なのは、緩みっぱなしの頭のほうだ。
ちょっとした何かを思い出そうとしても、その手がかりさえ浮かばず、何もつかめない…そんなことばかりだ。

常に白々と淡い靄がかかったような頭。
虚空のなかを悄然と漂う頭。
記憶していたこと、それをもとに考えること、その確かなネットワークを失った頭。

やれやれ。とりあえず、夏の疲れのせいにしておくしかないか。

 

お彼岸の海辺はいつになく、にぎわっていた。

浜辺にはフラの舞台が設えられて、多くの人がステージを見つめている。
やわらかな旋律、ゆるやかなリズム、やさしく伸びる腕、風に乗る指先。
薄曇りの空のもと、人々の時間もゆっくり流れているように見える。

波のなかには、黒い人影が群れなすように浮かんでいる。
波間に漂い、ゆっくりと上下する人影を見つめていると、その心地良い波の圧力、ほのかな水温が伝わってくるようだった。

ここでは、何も思い出す必要はなかった。思い出さなくても、どうでもよいのだった。ぼんやりと、空と波を見ているだけ…。

 

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9月21日の海①

9月21日の海②f:id:vgeruda:20190921220620j:plain

9月21日の海③f:id:vgeruda:20190921220652j:plain

 

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カニの甲羅の裏側? 両側の突起は?:
小指の先ほどの大きさ…白地に紫の斑点が広がる模様は、窯変天目茶碗のような?