enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

初めまして、”グリア・ガースン”

 

 

一昨日、恥ずかしいので小さな声でつぶやくように豆まきをした(鬼とともに、コロナにも退散願いたいと願いつつ)。

立春を経て、今日は春一番が吹き荒れた。

ベランダの洗濯物の影が大きく揺れ、そのまま飛び去ってゆきそうだった。
その不穏な動きを気にしつつ、しばし、古い映画を眺めて過ごした。

タイトルは『心の旅路』…子どもの頃の記憶のどこかに引っかかっていた映画。
(どんな映画? 見たことは? 『かくも長き不在』とごっちゃにしている?)

いざ観始めると、どうも一度も観たことがない…たぶん…ということが分かった。
そして、しだいに引き込まれていった。

やがて、観る人に不意打ちを食らわせるように、夜の外気の霧とともに、謎めいた美しい人が登場した。その場面で『あっ!』と思った。

『もしかしてグリア・ガースン?』と感じたのだ(で、その”感じ”は当たっていた)。

グリア・ガースン…小さい頃にその名を聞き知っていたけれど、実際にその映画を観たことはなかった。
(何かの機会に彼女の写真を見たことはあり、イギリスの女優さんということは知っていた。そのツンとした透き通った美しい表情が、子どもの私が抱いた印象の全てだった。)

長らく思い込み続けたイメージは、映画を観終わってみると、すっかり別のものに入れ替わっていた。

知的ではあるけれど、冷たくはなかったし、「ツン」とした瞳の表情は一瞬強くひらめくものではあったけれど、本当に一瞬のものでしかなかったのだ。

私が思い描いていた”グリア・ガースン”は、長らく、氷のような、雪のような結晶であったのに、今や、やわらかな花びらに変じてしまった。

不思議な感慨。
さよなら。私が思い込み続けていた”グリア・ガースン”。
初めまして。気高くも花びらのような”グリア・ガースン”。

 

 

公園の桜のつぼみ(立春の2月3日)

f:id:vgeruda:20210204214234j:plain