enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

鎌倉国宝館で「實雄」に出会う。

 

28日、強い風が11月の空を真っ青にしていた。

午後、鎌倉に向かった。
観光客であふれる小町通りを、老体の反射神経を精一杯駆使してすり抜け、黄葉・紅葉に飾られた鎌倉国宝館にたどり着く。

特別展「国府津山 寶金剛寺密教美術の宝庫-」…これまで、寶金剛寺の存在を知りながら訪ねることができなかった私は、その宝庫の多様な品々を、親しみやすく分かりやすく工夫された詳しい解説文に導かれながら、ゆっくりと眼にすることができた。

もちろん、「大日如来坐像」や「地蔵菩薩立像」・「不動明王及び二童子立像」などの優れた諸像を眼にした喜びも大きかったのだけれど、「恵雄授実雄秘密灌頂印信印明」(1572年)と「恵雄遺状」(1606年)にも眼を奪われた。
(以前、『enonaiehon』(追記:『平塚市史』による「成事智院蹟」 - enonaiehon (hatenadiary.jp))で引用した實雄の経歴に係る史料が、今まさに眼の前にあることに心騒いだのだ。28歳頃の實雄が、国府津金剛寺で灌頂印信を授けられ、62歳頃には、實雄を後継者と定める九世・恵雄(えおう)の遺状が記されたこと、同時期に徳川家康によって大山寺初代学頭に抜擢されていること…という實雄の現実的な足跡が、恵雄の個性的な筆致で記された二つの史料によって、具体性をもって浮かび上がってきたのだった。また、そのことで「成事智院」の実在感までもが高まった気がした。)

やはり、展示は行ってみないと分からない、見てみないと分からない…そう感じた。
11月になって出かけることが続き、少し疲れてはいたけれど、欲張って鎌倉までやってきて良かった。

 

鎌倉国宝館の前で①:黄葉に囲まれた”大日如来様”

 

鎌倉国宝館の前で②:
【左】階段下の黄葉と花びら       【右】水面の黄葉と紅葉