今は誰も住むことのない家…まもなく跡形も無く消えるはずの家…には、数十年も眠ったままの本がある。廃墟になりかけのその家に、このところ何度か通っている。そして、もう少しの時間、手元に置いておきたい本たちを選んで持ち帰っている。
それでも、遺してきた本に、やはり少しだけ心残り(廃棄することの迷い)があった。
昨日、その家に帰るのはほとんど最後…そんなつもりで出かけることになった。
そして結局、古い古い文庫本の束…小口が日焼けで変色している…を、持ち帰ってきた。
日焼けした文庫本たち…どうしても資源ゴミには見えなかった。
学生時代の私が偏読し(その割には、内容の記憶がほとんど無いのが哀しい)、置き去りした果てに変色した文庫本たち。
(小説では、ほとんどが三島由紀夫の作品。ほかに大江健三郎や夏目漱石が多かった。)
帰宅してから、三島由紀夫の文庫本…なつかしいデザインの新潮文庫本22冊…をシリーズとして順番に並べ、『新潮文庫解説目録ー1973年』と見比べてみる。
『永すぎた春』と『獣の戯れ』が欠けていた(なぜ欠けているのか…今となっては分からない)。
リストも作った。
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【新潮文庫】
仮面の告白
花ざかりの森・憂国
愛の渇き
盗賊
禁色
鏡子の家
潮騒
金閣寺
美徳のよろめき
沈める滝
美しい星
近代能楽集
午後の曳航
宴のあと
音楽
真夏の死
獅子・孔雀
青の時代
鍵のかかる部屋
ラディゲの死
アポロの杯
肉体と衣裳
【中公文庫】
文書読本
作家論
荒野より
癩王のテラス
【講談社文庫】
剣
絹と明察
太陽と鉄
【角川文庫】
純白の夜
夏子の冒険
不道徳教養講座
【集英社文庫】
夜会服
肉体の学校
【文春文庫】
行動学入門
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写真も撮った。
もう、心残りは無い……無い。
「さようなら、古い文庫本たち…」