enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

秋の海。

 

16日夕方、日本酒と葡萄を届けようと、次兄の家に向かった。

途中で、遠くの横断歩道を渡る次兄の姿をとらえた。散歩に出たのだろう。ゆっくりとこちらに近づいてくる兄に手を振った。

道の向こうから眼を細めて私を確認した兄は、ちょっと疲れた様子だった。

「お墓参りから帰って今日は疲れた…ここで家に戻ろうかな…」
そう言って、兄は私と一緒に来た道を戻ることになった。

お墓参りでいろいろと思い出すことがあったのだという。兄には兄の屈託があるのだった(年齢を重ねても、屈託は枯れてゆかないのだ)。

門の外から私を見送る兄と別れ、そのまま、浜に出ることにした。

平塚海岸の西寄りの浜は、私の小学生時代とは様変わりしていて、なつかしさ以上に心乱される場所でもある。

波打ち際からは高い絶壁となってしまった現在の砂丘
その崖面は、海に向かって、大きくて深い不規則な割れ目をいくつも並べていた。その割れ目深くには、人工物の大きな瓦礫が挟まっているのだった。

現在の砂丘には、おそらく、”よその土砂”が運び込まれているのだろう。
子どもの頃のさらさらとした砂のままだったら、こんなにも固く乾燥しない。こんなにも深い亀裂は生まれない。こんなにも大きな瓦礫をくわえ込んでいるはずもない。そう感じた。

人々が日々くつろぐ浜辺の現実だった。

波打ち際を東に向かう。

いつも眺める海とは違った表情。

次兄の屈託…砂丘の深い割れ目…それらも、しだいに海風に洗われてゆく。

いつもの浜辺に行き着く。

いつもの、何も無い浜辺だ。そして、やはり秋なのだった。

 

浜辺のスズメ

f:id:vgeruda:20210917151145j:plain

 

砂丘の大きな深い割れ目(2021年9月16日)

f:id:vgeruda:20210917153543j:plain

 

根こそぎで漂着した樹

f:id:vgeruda:20210917151154j:plain