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私の第三十四夜をつづります。

2020-01-01から1年間の記事一覧

法隆寺金堂壁画の”うねる瞼”

今春見学するのを楽しみにしていた「法隆寺金堂壁画と百済観音」展。結局、コロナ禍で見学の機会を失い、百済観音様は法隆寺にお帰りになった。 その見学の代わりにしようと、図録『特別展 法隆寺金堂壁画と百済観音像』(朝日新聞社 2020年)を取り寄せた。…

”千尋の顔をした資本主義”…そして”日・韓・台・香の合従策”…。

今朝、眺めていたツイートの最後にこうあった。 「…人間の顔のない資本主義から人間の顔をした福祉型資本主義へ。2分動画見てください。」 で、短い動画を見てみる。ふーむ、と思った。動画の中の白いボードには、話の概要と、その横に『千と千尋の神隠し』…

”野鳥の時計”

長雨の日々、澱んだ空気を震わせて鳥がさえずる。 その”野鳥の時計”を壁に掛けてから、1時間ごとに美しい啼き声が響くようになった。巣ごもりの部屋が、その瞬間、戦場ヶ原や伊豆高原の林にまぎれこむ。 今は夏鳥たちが訪れる。部屋に朝の光が届くと、アカシ…

「まあ いいか」を読んで。

夕方になって街に出ると、駅前で「2020年豪雨災害」の救援募金が行われていた。 2011年の大地震と大津波の生々しい記憶も消えないなかで、この数年、大雨や台風などによる圧倒的な破壊が容赦なく繰り返されている。そのたびに人々は打ちのめされ、打ちひしが…

「かやり火も ふせげと思ふを こぞの夏 煙のなかに たちぞさりにし」②

【248・349・453の3首】* 『相模集全釈』(風間書房 1991)から_____________________ ~中夏~248 したにのみ くゆる我が身は かやり火の 煙ばかりを こととやは見し (悶々とするばかりで、心がふさいで晴れない我が身は、蚊遣火の…

「かやり火も ふせげと思ふを こぞの夏 煙のなかに たちぞさりにし」①

コロナ禍と長雨が続く徒然なる日々。 遠のいていた歌人相模の世界をふと思い出し、本当に久しぶりに『相模集』を開いた。この数日のじっとりと湿った気分が、一千年前に”朽たし果てつる”と歌った歌人相模の言葉と、ぴったり重なるように感じたからだった。 …

いまだに宙ぶらりんの日々。

梅雨らしい蒸し暑さが戻った今朝、真夜中に着信していたメルマガを読む。そのメルマガの執筆者は今、ツイッターという言論の場から締め出されている。それでも、メルマガでの彼は健在であるように感じた。 今回、選ばれた題材はアレクサンドリア・オカシオ=…

10年後 … ?

21日 … 夏至の日の夕方、家族は部分日食を見に、海へと出かけていった。 一緒に行きそびれた私は、少し後悔することになった。あとから街に出てみると、梅雨らしい薄曇りの空も外気も、それは心地よかったから。『買い物など後回しにして、海に行けばよかっ…

梅雨空の花たち。

コロナ禍の日々は、心を少しずつ貧しくしているように感じる。摂り込む情報が偏り、心が干からびてゆくのを感じる。 心の淀みに浮かぶ”うたかた”は、宰相の口元にとり憑く式神のような白い小さなガーゼマスクであったり、首振り扇風機のように虚ろな運動を繰…

”熱伝導”者の汗。

梅雨らしい日が続き、南口の公園のバラの花色はすがれてゆくばかりになった。コロナ禍の日々、夕方の買い物の行き帰りに人魚姫の公園に立ち寄っては、そのほのかな草いきれに満ちた小さな自然空間にずいぶんと慰められた。 今日は朝から部屋が明るかった。室…

”I can't breathe” から ”I Have a Dream” へ。

”I can't breathe” ジョージ・フロイドさんが最期に発したその象徴的な言葉が、私には何ともいえない響きで迫ってくる。息ができない…その現実的・肉体的な恐怖も迫ってきて苦しくなる。 『今夜も吸入しなければだめなのか…』『今朝も吸入してしまった…』(…

富豪が語る”憂い”

つい先日、ネットの経済記事のなかで、”bullshit job”という言葉を初めて知ったばかりだった。続いて昨日、『朝日新聞』のインタビュー記事「新型コロナ 富豪が憂える資本主義」(ニック・ハノーアー:起業家・ベンチャーキャピタリスト)を読んだ。 彼は、…

コロナ禍の日々に読む物語

コロナ禍のなかで読みたいと思ったのは、エリック・マコーマックという人の小説(物語)だった。苦手な翻訳本だったけれど、休館前に図書館で『ミステリウム』を借り、休館中に『パラダイス・モーテル』を予約して借り足し、さらにネットで『雲』を注文した…

「傘は要らない」

とうとう6月。そして朝から雨。 ネットや新聞やTVからあふれる世界と日本のできごとが、朝からの雨で降り込められ、自分の内側に向かってくる。それらのできごとから生まれた痛みが、湿度をもって、こちらへと伝わってくる。 まず、ネットで観た動画に胸が苦…

カタツムリとトンボ(平塚海岸の林で)

5月後半、思いがけない場所で、かなりの数のカタツムリの姿を目にした。 子どもの頃は、生垣のどこかに潜んでいたカタツムリだったけれど、最近ではまったく見かけることがなかった。(ちなみに、身近な場所からカタツムリの姿が消えていることに気づいたの…

2020年5月に思う。

浜辺で暮らす猫 2020年5月もそろそろ終わってゆく。人魚姫の公園の色とりどりの薔薇たちも、重く重なり合う花びらをはらはらと散らしはじめている。早くも、次の季節へ向かう兆しを見せている。 人間もあんなふうに、心や肉体や生活を覆う皮膜を季節ごとには…

図書館へ出かけるということ。

先週半ばから図書館の予約受付が再開された。嬉しいニュースだった。 思えば十数年前頃からだったろうか。身近な図書館・博物館・美術館などの文化施設が、財政・経済効率上のさまざまな締め付けのもとに、本来の運営に発揮すべきエネルギーを消耗し、疲弊し…

”呪符木簡なるもの”にすがる2020年5月。

「検察庁法改正案 森法相が答弁へ きょう衆院委員会 採決のかまえ」(朝日新聞 2020年5月15日 朝刊)_________________________________ 15日の朝刊1面の記事を眼にして苛立つ。午後の内閣委員会の中継をネット視聴して、…

”Foyle's War ”を見る。

巣ごもり暮らしが続き、5月となった。この数日、ネットで公開中の『刑事フォイル』というドラマに魅入られ、うつつを抜かしている。 非日常的な2020年の日本から、さらに非日常的な1940年代のイギリス・ヘイスティングスへと、PC画面の扉から入り込んで90分…

それでも。

3月初旬からの巣ごもり暮らし…ほぼ2か月経ったのか…。 体調の悪い日はあっても、日常生活のルーティンをこなすことができているのはありがたいことに違いない。望まない。やり過ごす。自分にかまけているだけの暮らしだ。 しかし、日々の報道に接するなかで…

3月~4月の土曜日の数字を眺めてみる。

4月24日の平塚海岸入り口で 思えば、今春3月の初め、草津温泉に出かけたのが最後の遠出だった。 その後の巣ごもり暮らしのなかで、”国内の新型コロナウイルス感染者”の新聞記事(都道府県別感染者数・死者数などの一覧表)”を毎日切り抜くようになった。 そ…

四月の虹

18日土曜日の朝。雨はまだ音を立てて降りこめている。時折、台所の換気扇あたりから、風の小さな唸り声が響いてくる。 ひどい天気…それでも、ネット上で雨雲レーダーを見てみると、夕方には晴れるようだった。今日は虹が出るかもしれない…薄暗い部屋のなかで…

ドイツと日本…彼我のリーダーの違いとは?

14日朝、いつもよりは早い時間にベランダに出た。深く息を吸い込んだ。目の前のカイヅカイブキの葉先がキラキラと光っていた。昨日の雨の滴りだった。カメラレンズを通して覗くと、水晶の玉のように、雫のそれぞれが緑の景色を逆さまに?映していた。 午後に…

ミステリアスな『ミステリウム』

2年前、『日の名残り』という翻訳小説を読み始め、2日目で投げ出したことも忘れ、今回、完全休館に入る直前の図書館から借りてきた本が『ミステリウム』だった。 しかも、著者のエリック・マコーマックの名もまったく知らないのだった。 『ミステリウム』の…

家…時々浜辺。

6日、日没に間に合うように、海に向かった。平塚海岸から”ダイヤモンド富士”を見る久しぶりの機会なのだった。 海に向かう通りの交番の前で、なぜかお巡りさんが直立していた。いつもは見られない光景。明日には出されるはずの「緊急事態宣言」について思い…

ミレーの『春』との新しい出会い。

4日の夕べ、いつものように眺めていたネットのなかに、ヴァイオリンを弾く仁和寺のお坊さんの姿があった。境内を吹き通る風にひるがえる白い衣、湧き上がる弦の音色。 今、地球上ですでに進んでいるのかもしれない”天人五衰”の相…そうした現実をまだ見通し…

巣ごもりのなかでさまよう。

私が巣ごもりしている部屋の壁に、小さなカレンダー(『やむぬはぎーねー うみんはぎーん 山がはげると海もはげる 』)が掛かっている。 そのカレンダーの4月の写真は、春らしい光にあふれていて、見るたびに気持ちが明るくなる。 辺野古の近くの浜辺だろう…

世界の人々にとって”失われた2020年”に?

”2020年”という年が、4月1日現在に至るまで、こうした展開になってゆくとは…。 1月…年始は穏やかな良い天気が続いた。15日出発の家族とのミャンマー旅行、そして25日からの友人たちとの草津行きに備え、体調に気をつけて過ごした。新型コロナウィルスはまだ…

”別世界”の海。

この3週間ほど、”自主隔離”に近い生活が続いていた。 日常の時間がよどんでくる。清らかな空気を胸いっぱいに吸い込みたい。 家族から、海の近くで桜が咲き始めていると聞き、それならばと海へ向かった。 海への道の途中、店先に植えられたローズマリーの花…

赤木俊夫さんの言葉。

今朝、朝食前に駅に向かう。『週刊文春』を買うためだ。たぶん、私にとって生まれて初めてのことだと思う。 グラビア頁を開く。 2018年3月7日のノートの写真だった。赤木俊夫さんが、自ら人生を閉じる前に、他者に向けて訴えた言葉がそこに在った。まさに”魂…