enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

終わらないし、消えないさ。

朝、開けた窓から聴こえてくるのは、ジリジリとした蝉の声ではなく、秋の虫の秘かな声に代わっている。とことん暑かった夏もじきに終わってゆく。何ごともなかったように。 でも、福島も辺野古も、そんなふうには終わらないさ。虚しいけれど、声は消えないさ…

高原の蝶と花たち③

私は湿原の風景が好きだ。 なぜだろう?湿原という…ある意味で…閉じられた空間の中でこそ、解放され、その風景のなかに消えてゆけるように感じるのは? 湿原を歩んでゆくうちに、しだいに日常の時間が遠のいて、記憶の底に沈んでいた世界…私より先に、あらか…

高原の蝶と花たち②

1泊した翌日は高峰高原~池の平湿原に向かった。 日本海へと抜けていった台風の余波だろうか、午後には雨が降りはじめるという。 それでも、雲間から洩れる陽ざしを喜ぶように、ひらひらと蝶が飛びまわる。少し標高を増して『涼しくなったかな?』と思うと、…

高原の蝶と花たち①

8月半ば、家族と信州の高原に向かった。 短い旅のなかで撮りためた蝶や花たち。昼間の高原は憧れの冷気からはほど遠かったなぁ…と思い返している。それでも、高原に咲くハクサンフウロたちの下葉は赤くなりはじめていて、季節は確かに秋へと移っているようだ…

所蔵品たちの境遇。

地方財政の厳しい現状のなかで、美術館・博物館の学芸員さんたちは理想と現実の gap に悩み、葛藤の日々を送っていることだろうな…と、これまでも感じてはいた。 しかし今日、一連の報道記事(毎日新聞:【美術品を「粗大ゴミ扱い」大阪府が地下駐車場で105…

メモ:七ノ域遺跡第3地点

平塚市博物館夏季特別展を観て刺激を受け、「白釉緑彩埦」が出土した”七ノ域遺跡第3地点”についておさらいしてみた。(発掘調査報告〔『七ノ域-第3・5地点-』2009年 平塚市教育委員会〕をもとに、次の通り、簡略なメモをまとめた。) ~七ノ域遺跡第3地点…

メモ(個人的イメージmap):七ノ域遺跡と周辺遺跡の大型掘立柱建物

【七ノ域遺跡とその周辺遺跡について】 七ノ域遺跡は、相模国府域の北辺中央部に位置する。その主な出土資料として、「石」墨書土器〈第1地点〉、「安宗太田部万呂▢伏」墨書土器・鉄製錠前(長さ19.4㎝の鍵)〈第2地点〉、白釉緑彩埦・「木」墨書土器〈第3地…

”「カラフルな考古資料たち」を楽しむ“

5日、平塚市博物館の夏季特別展を見学し、展示解説を聴いた。 で、こうした解説を聴くのは、たいていは大人たちなのだ…しかも、私のような”高齢者”が多かったりする…。今回の特別展のタイトルに冠された「茶色ばっかりじゃないんだぞ!」の言葉が、夏休みの…

砂丘上の古墳群と国府域

≪map:相模国府域周辺の古墳・古塚・周溝墓≫ ● 古墳・古塚・周溝墓(出典:『平塚市史 11 上 別編考古(1)』1999年 平塚市博物館市史編さん担当、ほか) _____________________________________ 1997年、平塚市博物館…

墨書・刻書土器から見る”相模国府と大住郡の活動域”

≪map:墨書・刻書土器から見る”相模国府と大住郡の活動域”≫〔左クリックで少し拡大されます。以下同様〕 〔註〕図中で破線 ----- ・点線 …… で示したルートは、あくまでも”個人的な妄想”によるものです。(「古代東海道」の西延長ルートは、構之内遺跡第3地…

高林寺遺跡第7・第9地点の区画溝の”可能性”

≪map:高林寺遺跡第7・第9地点の区画溝の周辺≫ 高林寺遺跡第7・第9地点の区画溝について、2年前の『enonaiehon』では次のようにおさらいし、要約している。 「…この区画溝の解釈については、①1988・1990年の報告書で”8c中葉~10c前半の相模国庁区画溝”…

メモ:多賀城市の八幡神社について

連日の暑さで、いつもの妄想がますます泥沼化している。 そんななかで、多賀城市の八幡神社の由緒を知った。平塚八幡宮の勧請について参考例になるかもしれない。要点をメモしておく。 【多賀城市の八幡神社について】(参考:「多賀城市の文化財」、『多賀…

「沼浜」の風

8日午前は「大倉幕府周辺遺跡群」の現地説明会に参加し、午後は鎌倉から2駅先の東逗子駅で降り、沼間の地に向かった。 『吾妻鑑』の時代、沼間の地は「沼浜」と呼ばれたようだ。 今回、その「沼浜」に引き寄せられたのは、最近、平塚の12世紀の八幡宮につ…

いざ「大倉幕府」

8日、朝から鎌倉に向かった。まだ観光客の少ない小町通りを抜け、鶴岡八幡宮をめざす。 曇り空でも蒸し暑く、八幡宮の広々とした空間に出てホッとする。蓮の花で埋めつくされた源平池や、境内に並んだ骨董市に寄り道しながら、現地説明会が行われる横浜国大…

『相模武士団』(関 幸彦編 吉川弘文館 2017年)のなかの一節

2日、図書館で『相模武士団』(関幸彦編 吉川弘文館 2017年)の「保元・平治の乱と相模武士」(川合 康)の一節を読んだ。 その論考の中に、相模国府移遷の時期とその要因について、以下のように言及されていたので、抜粋・引用し、備忘録として残しておきた…

追記:「成事智院」(高瀬慎吾)から

1983年、高瀬慎吾氏は「成事智院」と題したコラム(『広報ひらつか』№378 1月号 1983年1月15日発行)も書かれているので、そこから短く抜粋・引用して載せておこうと思う。____________________________________ 成事智…

追記:「實雄法印の塔」(高瀬慎吾) から

今回、「八幡別当 成事智院」について復習した機会に、高瀬慎吾氏(1900~1991)のコラム(『広報ひらつか』№186 4月号 1967年4月15日発行)も、ここに抜粋・引用しておきたい。____________________________________ 新…

追記:『平塚市史』による「成事智院蹟」

これまで、11~12世紀の相模国府の景観を思い描くなかで、12世紀代の八幡宮を相模国府中枢域の「八幡」の地に置いてイメージしてきた。そして、その「八幡」の地(上高間)にあった「八幡別当 成事智院」が、1609年、現在の平塚八幡宮の地(旧・八幡新宿)に…

『廻国雑記』の「八幡といへる里」前後のルートについて

平塚の八幡の当初の位置について考えてきたことをおさらいしたあと、『廻国雑記』での道興准后の相模国通過ルートを、図書館の『日本歴史地名大系 神奈川県の地名』(1984年 平凡社)などで調べ直してみた。現時点で気になったことをメモしておこうと思う。 …

あらためて ”平塚八幡宮と八幡” について

25日午後、平塚市史 刊行記念 講演会(「お寺と神社からみた平塚の歴史」)に出かけ、お二人の講師(菅原昭英氏、鈴木建人氏)による講演、館長や講師陣のディスカッションを聴いた。 詳細で具体的な資料とエネルギッシュでわかりやすい語り口に思わず引き込…

写真メモ:20230610

6月10日、薄曇りの陽射しのなか、武蔵野台地の北縁部を歩いた。 尾久駅から赤羽駅まで、坂道を上り下りし、石神井川を渡り、最後は「日光御成道」のルートも歩いた。これらの高低差のある地形を地図と身体で確かめながら、さまざまな時代の痕跡をたどった。 …

常念岳の麓へ(3)

旅の四日目。あっという間に旅の時間が過ぎてゆく。 【6月8日(木)⛅】 明日は再び鈍行電車で平塚に帰る。安曇野を歩くのも今日が最後になるのか…。まず家族と「田淵行男記念館」を訪ねる。 想像した通りの「田淵行男記念館」だった。初めて訪れたような気が…

常念岳の麓へ(2)

旅の二日目の6月6日。朝9時前、ホトトギスの一声を耳にしながら宿を出た。戻ったのは16時過ぎだった(7時間のうち、宿との往復で2時間を費やしていた)。 今回の旅の目的地…「アルプスあづみの公園」では、全体の半分を歩いたところで時間切れとなった。サン…

常念岳の麓へ(1)

6月上旬、どうやら天気は持ちそうだった。 朝早く、鈍行で穂高に向かった。(家族の旅の目的はほぼ一つ…オオルリシジミ。そして同行する私の望みは、南豊科の友人に数年ぶりに会えるだろうか…というものだった。) 結局、家族は今季最後のオオルリシジミに出…

久しぶりの発掘現場見学会:「及川伊勢宮遺跡」

18日朝、「及川伊勢宮遺跡」(厚木市及川)の発掘現場に向かった。 10時開始の説明会に20分ほど遅れて着き、まず見学者数の多さに驚いた。すでに数百名の方々が受付を通り、説明の順番を待っていたのだった。 次に驚いたのは、目の前に現れた前方後円墳の”剥…

いつまでも土屋の里で。

8日朝、雨の中を駅からバスに乗り、土屋に向かった。(待ちに待った日…”土屋三郎宗遠公”にいよいよお目にかかれる日…あれやこれやと思い描き、熟睡できないまま朝を迎えたのだった。) 大勢の学生さんたちを載せた”満員バス”は、渋滞した街なかを走るのに30…

5月初めの高麗山で。

5月2日、再び高麗山に出かけた。今回はホトトギスとオオルリを…せめて声だけでもと…期待して。 4月初めの高麗山を楽しんでから1か月。山はすっかり初夏の姿に変わっていた。 いつもなら行き交う人もない八俵山への坂道で、「こんにちは」の挨拶を繰り返した…

「ピース」が咲いていた。

4日ほど家を留守にしている間に、人魚姫の公園の「ピース」はすでに満開になっていた。 カナリアに似た黄色のとても大きな花。外側の花びらの縁には細く紅色がさしている。そして淡い香り。 「ピース」は、やわらかく、おおらかに咲いていた。 「ピース」の…

薔薇色のなかの人魚姫。

4月も後半…春の風を受けて、公園の人魚姫が優しい目をしている。そんな彼女を囲んで、公園の薔薇たちが色とりどりに咲きはじめ、それぞれにささやきかわしている。『今年は早く目が覚めて…今日もあたたかくてさ…気持ちが良くて…ほらね…みんな元気そう!』 夕…

春の「しおさいの森」で。

15日、家族に誘われて「しおさいの森」まで花を見に出かけた。 急にあたたかくなったからだろうか、身体がだるく、足も重い。黄砂もまだ飛来しているのかもしれなかった。 海風を受けとめてうねるように伸びて群れなす松たち。その林の片隅にひっそりと咲い…