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私の第三十四夜をつづります。

2013-01-01から1年間の記事一覧

相模集-由無言1

今夏、再び『相模集全釈』(武内はる恵 林マリヤ 吉田ミスズ 風間書房1991)を県立図書館から借りてみた。紫式部でもない。和泉式部でもない。相模国司大江公資の「つま」となって「相模」と呼ばれた女性。彼女が一千年前に残した歌の数々。そこから、21世紀…

星形鋲と淳和院出土の飾り釘

坪ノ内遺跡第5地点出土の銅製頭部星形鋲はSB01から2点、P09から1点、遺構外から1点出土している。報告書では「華奢な作りで、飾り金具としての使用が適していると思われる。(中略)厨子のような建具の存在を想起させるものである。」とされている。 この…

2013.8.9

平塚で戦後の復興を願って始まった7月の七夕まつりに対し、隣の大磯町の七夕祭(国選択無形民俗文化財)は、月遅れの8月に行われる。日盛りのなかで生と死の影が重なり合う季節だ。 数年前、西小磯西地区の七夕を見学した。今年は、8月6日の午後、西小磯…

2013.8.5

日曜日の夕方、浜辺では五時半を過ぎても、まだ多くの人が夏の海を楽しんでいた。 西の雲間から光が放射状に散らばって、海岸線に沿って並ぶ遠くの建物がくっきりと浮かび上がっている。 ベンチを見やると、何か茶色のバッグのようなものが載っていた。 近づ…

2013.8.2

浜辺から猫の姿が消えて、海への散歩がどことなく満たされない。 猫はベンチにすわり、私と同じ風景を見つめている…と思っていた。 私は浜辺暮らしの猫をひそかに友人にしていたらしい。私はいつもこんなふうだ。 今日の海は灰青色の空が低く広がり、浜辺の…

2013.7.29

梅雨明け後の猛暑の後遺症だろうか。いつもの道を歩いていても、どうも体の重心が定まらない。アスファルトにつまづきそうになったりする。 日曜日、「天城高原は涼しいよ」という誘いを受け、不安な体力のまま、伊豆に向かう電車に乗った。電車とバスを乗り…

12世紀後葉の白磁とかわらけ

今日も「真田・北金目遺跡群展」に出かけた。 墨書や11世紀前葉の資料についで、興味を惹かれた展示は、12世紀後葉のセット関係にある白磁とかわらけだ。同安窯とされた白磁の破片には、竜安寺の石庭のような細線の文様が施され、灰緑色に光っている(私には…

「方𦊆」墨書土器と「保」・「大夫」刻書土器

真田・北金目遺跡群展で、宮久保1区SG001出土の「方𦊆」墨書土器(8c中葉~後葉)を見ることができた。図録の解説では、「金目の一部が、当時は、「片𦊆」郷であった可能性」、「拠点的な祭祀場である「金目」郷で、「片𦊆」郷の人たちが祭祀をした可能…

相模国府と真田・北金目遺跡群

投票を済ませた日曜の午後、平塚市博物館に向かった。博物館の奥まった特別展示室では、「真田・北金目遺跡群展」、「平塚市文化財展」が一挙に繰り広げられている。この日をずっと楽しみにしてきた。 奈良・平安時代において、真田・北金目地域は相模国府と…

2013.7.20

七夕が過ぎた頃から平塚市博物館に通い続ける日が続いた。慌ただしい作業が終息して訪れる安らぎの時間帯。 昨日の夕方、身体の疲れがそのまま心の軽さとイーヴンになっていた。外に出ると、西陽がわずかに衰え、石畳の並木道が斜光のなかに静まっている。 …

2013.7.17

平塚の海と空の移ろいを見つめ、小さな場所を静かに占有していた浜辺暮らしの猫。この夏、もうその姿を見ることは無い。 浜辺の片隅のベンチ。そこに、ほとんどいつも座っていた。そして、この夏を前に、見守ってくれる人に引き取られていったと聞いた。 き…

列島展で出会った少女

13日、「日本列島展2013」を見学する機会があった。 地元の平塚市博物館では、「真田・北金目遺跡群展」が20日にオープンする。発掘された資料の価値は、列島展に負けないのでは?という思いを持ちながら両国に向かった。 しかし、会場に足を踏み入れた途端…

2013.7.7

梅雨明けの陽ざしとはこうも強かったろうか。毎年のことなのに思い出せない。 大きなケヤキの枝をざわつかせて南風が吹き抜け、その葉影が波のように揺れ動く。 その木洩れ日の波間を見つめていて、一瞬、気が遠くなる。 今日は、午後一番の待ち合わせの約束…

2013.7.1

この頃、時間という波がとどまらず流れ過ぎていく・・・というより、茫々とした時間の海の中をあてどなく漂って流され続けている・・・そう思える。 自分の中の時間はいつとも知れずとりとめがないけれど、世の中は七月一日。海に向かう大通りに真新しい竹飾…

2013.6.30

司祭者は語る。 その白くやわらかな手から「今、矢が放たれた」と。 祝祭に捧げる魔物に向かって「次々と矢は放たれた」と。 人々は手を休めずに耳を傾けている。 その労働の果てに祝祭は用意されるべきだったから。 しかし、人々は気づき始める。 その司祭…

2013.6.29

歩いていると、大げさに言えば、自分が存在すること、世界が存在することについて、果てしない堂々巡りに陥ることがよくある。 時間とは、空間とは。物質とは、生命とは。意識とは・・・。空しい尻尾をグルグルと追いかけるのだ。存りそうで無い。無さそうで…

2013.6.27

六月というのに、この風は何もかも洗い流すようだ。陽ざしは真夏になってはいない。こんな風に吹かれるとき、いつも訪れる言葉は”吹く風に湯あみして・・・”。 正しくは”吹く風に浴みすべし”であるらしいのに、私のなかではいつの間にか”吹く風に湯あみして…

2013.6.25

今日、突然、お古のカメラを譲り受けた。ズシリと重いが、カメラらしい形をしている。 今使っているカメラに比べ、どれほど望遠が撮れるものなのだろう。何だか嬉しい。さっそく海へ向かった。 途中、1週間ぶりにツバメの巣に寄ってみる。まだ卵を抱き続けて…

2013.6.23

再び梅雨の晴れ間となった22日、鎌倉の極楽寺駅から湘南海岸公園駅まで歩いた。 途中、稲村ケ崎、七里ヶ浜、腰越の海岸のそれぞれの砂を採集することになった。 鎌倉の海と浜辺の表情は、いつも見慣れている平塚海岸とはほとんど別のものだった。 切り立った…

2013.6.18

梅雨入りして、雨空の夜明けに蛙の鳴き声が響き渡るようになった。今の住まいは駅に近く、周囲に水辺は無い。どこで鳴いているのだろう。やはり雨が好きなのかと納得する。 毎年、住まいの非常階段や通路の壁で休んでいる蛾の姿にもひきつけられる。長く住ん…

8c初頭の相模国庁

六月に入って、8世紀初頭~前半の時代に戻って”夢うつつ”の時間を過ごしてきた。相模と常陸の国庁創設について、簡単な比較表を作る必要に迫られたからだ。 結局、確認事項をまとめるのがせいぜいで、新たな疑問が増えただけで終わった。それでも、これまで…

2013.6.3

梅雨の晴れ間に恵まれた昨日、東京の友人とともに、原発の無い暮らしを求める集会に参加した。 2011年9月の集会では、首都に集う自分達の訴えが、日本の空全体にまで届きそうな、そんな心の高まりがあったと思う。 2年後の集会は、新しい道筋への希望より、…

2013.5.27

平塚の駅ビルに屋上庭園ができた。駅ビルが誕生して40年経ったということらしい。もうそんなに・・・?と思う。 平塚の駅ビルの十数年後、隣町の茅ケ崎駅にルミネが生まれたのだった。そのキャッチコピーは「茅ヶ崎が都市になる日」。 『そうか、東京から見…

2013.5.25

戦争を知らずに貴方は育った 貴方は自らに問うべきだ 召集命令状という形をした国家の名のもとに 戦場で他者の命を奪い また自らの命を投げ出せるのかと 国家という正体の見えない闇の中へ ”女”の心と肉体を供出できるのかと 戦争を知らずに育った貴方が戦争…

2013.5.24

昨日は一歩も外に出なかった。もうすぐ五月が終わろうというのに。 葛根湯を飲み咽喉の痛みが和らいだ。外の空気を吸いにゆこう。 どんよりと重い頭も身体も、一歩外に出ただけで生き返るようだ。 血液の中に酸素がとけてゆく。 海は今日も風が強い。砂がそ…

祈りの造形(3)

15日と18日、上野と千葉で開催中の展覧会に出かけた。私にとって日常の暮らしとは別世界の贅沢な時間、空間だった。神社展では伊豆山神社の男神立像や六所神社の男神立像について、また仏像半島展では下吉沢の不動明王立像について新しい視点、手がかりを得…

2013.5.13

五月も、薔薇を見ないまま、すでに半ば近くになっていた。 昨日、二日酔いを後悔しながらも、そうだ、薔薇を見そびれてしまうと思った。 午後になって、まだ重くよどんだ頭に五月の風をあてようと、薔薇の散歩道を歩き始めた(平塚の街には五月の薔薇を楽し…

改めて”不動平”を探し直す(2)【追記】

今回、平塚市博物館のHPからはさまざまな情報を得ることができた。 「発見!ひらつかの民俗 第2回 下吉沢の山と信仰(2009年5月8日)」の記事には、”幻に終わった不動平”の石祠や、大きな樹の下に祀られていた石祠についても詳しく書かれていた。その記事…

改めて”不動平”を探し直す(2)

四度目の下吉沢探索から帰ってから、「不動平」と「大光寺」について重要な情報を得た。一つは平塚市博物館から、もう一つは『新編相模国風土記稿』からだ。 まず平塚市博物館では、“大光寺跡”とされる地点を教えていただいた。そして『新編相模国風土記稿』…

改めて”不動平”を探し直す(1)

連休の最後の日、下吉沢に向かった。今回の目的は二つ。 新たに、大磯町寺坂の王福寺の旧位置とされる地点を確かめること。 そして、改めて”不動平”を探し直すこと。 前回、偶然に地元の方に出会って、”不動平”と呼ばれる地点の方角だけは明らかとなった。や…